ピピピピピピ…
「んー…」
ピピピ…ピッ
どこかで起床の時間を知らせる携帯を手探りで探し
画面も見ずに音を止める。
結局、昨日は藤本くんに送るメールの内容を考えるのに
付き合わされゆりなの部屋に泊まった。
ちなみにみっちゃんは
「私、明日早いから家で寝るわ。」
と言って帰っていった。
…にしても。
あんな話したから変な夢見た…
てゆーか、私の記憶力もダテじゃないな…
あんなに鮮明に見るとは。
まぁ若干、脚色されてるとこもあったけど…
「さて。ゆりなーっ起きなーっ」
「んー…後、5分…」
出た。
寝坊助の典型的な後5分…
「んな事言ってたら遅刻するってーのっ私、一回着替えに部屋戻るけどちゃんと起きなよーっ」
「あーい…」
そう返事をしてゆりなは再び夢の中へと戻っていった。
「はぁー…」
ーーーーー
「おはよーっ」
「おはよー!!」
朝の挨拶が飛び交う正門。
私は、携帯とにらめっこをしていた。
「あれ?あゆな。おはよーっ」
「あ、千秋と朋子。おはよーっ」
「何してんの?」
「決まってんじゃん、朋子。眠り姫待ってんでしょ?」
「あははっ!!正解。」
「なるほど。毎朝ホントお疲れ様です。」
「じゃあ、ウチら先に教室行ってるね。」
「はぁい…ふぅ…」
千秋たちと別れ
私は再び携帯に視線を移し、小さくため息をつく。
時刻は既にホームルームが始まる20分前。
携帯の履歴からゆりなの名前を見つけ
通話ボタンを押そうとした時、聞き覚えのある声が耳に入った。
「ねみぃー…」
「お前、それ常に言ってんじゃん。」
「遥輝はなんで、そんな元気なんだよー…」
「俺、朝好きだし。」
遥輝…センパイ…
私服だし、髪は茶色くなってて
いまどきの男の子みたいにワックスでいじってて
だいぶ、印象違うけど…
3年も思い続ける人を間違える訳がない…
それに何より
一緒にいる人が”遥輝”って。
何でここに…
遥輝センパイは
私に気づくことなく私の前を通り過ぎていった。
「…っ。」
「あゆなーっ!!」
「ゆりな。」
「ゴメンーっ!!あれからまた二度寝してしまって…」
「うん、知ってる。それを見届けて部屋に戻ったもん。」
「起こしてよっ」
「起こしたわっ何回もっ」
「すみません…てか、それよりさ今、あゆの前通ったのって…」
「…うん…遥輝センパイだった。」
「声かけなかったの?」
「突然の事すぎて…てか、声かけたところでセンパイが私の事、覚えてるかわかんないし。」
「えーっ!?だって、結構仲良かったじゃん。」
「仲良かったのは実華とセンパイ。センパイにとってあくまで私は実華と常に一緒にいる子でしかなかっただろうし。」
「そんなのことないって。」
「そーいう人なの。センパイは。」
そう。
いつだって考えてるのは実華の事。
私の事なんか覚えてる訳ないし…
「まぁでも、センパイが首にかけてた名札ってうちの学校と姉妹校のやつだったよ。またそのうち会えるんじゃない?」
「えっ!?うそっ!?てか、ゆりな。視力良すぎ…」
「まぁね。両目共に1,5あるもん。」
「うらやましいー…」
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
「あ、予鈴。とりあえず、教室行こう。」
「ゆりなー…あんたがそのセリフ言うなってーの。」
「あ、やっぱりそうなる?」
「なる。」
そんなやり取りをしながら私たちは教室へと向かった。