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キーンコーンカーンコーン

「終わったー…期末、全科目終了っ」
「あゆなーっお疲れっ!!」
「お疲れーっ!!ね、実華っ。今日まで部活ないんだよね?」
「うん、今日の午後から大会だからね。」
「あー…だったら彼氏さんの応援行くの?」
「ううん…大会は市内の方だから応援行けなくて…」
「だったら今からカラオケ行こうよっ!!」
「あ、いいねーっ!!」

荷物をまとめて私たちは昇降口へと向かった。

「実華、テストどうだった?今日のは得意科目でしょ?」
「あゆな?」
「ん?」
「終わったことを悔やんでも仕方ないから。」

そう言って実華は遠い目をする。

「悟るな悟るな。要するに、ダメ…」
「さぁー歌うぞーっ」
「現実逃避。」
「げ、現実逃避じゃないもん。前を見てるんだもんっ」
「それを世間一般的には現実逃避って言うんですーぅ」
「ぶはっ!!」

そんな話しをしながら
昇降口で靴に履き替えてる背後から突然、笑い声が聞こえてきた。

「お前たちのやり取り、コントみたいだなっ。」
「ハルっ!!」
「よっ!!お疲れ。あゆなちゃんも。」

ドキッ…

「お疲れ…様です…」
「てゆーか、何でいっつもいっつもいつの間にかウチらの後ろにいる訳ー?ビビるんですけどっ」
「たまたまだろ。」
「えー…あ、それよかさ、今からウチらカラオケ行くんだけどハルも行かない?人数多い方が楽しいしっ」

えっ!?

「いいよね、あゆ。」
「え、あー…」
「遥輝ーっ!!なぁに、後輩引っ掛けてんだよっ」
「うぉっ!?」

私が答えに迷っていると
遥輝センパイのお友達らしき人が2人やってきてセンパイに絡んできた。

「しかも2人もっ!!」
「1人占めはズルいぞーっ」
「あのなー…そんなんじゃねーからっ」
「みんなでカラオケ行こうって話ししてたんだろ?どおせ、みんな行くとこは同じだし。俺らも混ぜろよー」
「何事も女子がいた方が盛り上げるしなっ」

はっ!?

「いいですねーっぜひ、ご一緒にっ」
「え、ちょ、実華…」
「お、ノリいいねーっ」
「だって楽しいこと大好きですもんっ」

あ然としてる私を横目に話はどんどん進んでいき

「…ったく。」

遥輝センパイも呆れた表情で
実華たちを見ていた。

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「そーいえばっ自己紹介がまだだったな。」
「はいはーいっ!!俺、篠崎努。今日が誕生日でーすっ」
「そーなんですかっおめでとうございますっ」

…あの最初に絡んできたセンパイ…
どおりテンション高いと思ったらそぉいうことね…
…まぁ普段からああなのかもしれないけど。

「俺は本田啓太。遥輝とは小学校の頃からの幼なじみ。」
「へぇーっ!!」

…あの人、見た目おとなしそうなのに…
メガネかけてるし(←勝手なイメージ)
テスト終わりは皆をハイにさせるのかな…

「じゃあ次は女子だな。遥輝は皆、知ってるし。」
「ついでに遥輝との関係も聞きたいな?」
「私、佐藤実華ですっ!!ハルとは、委員会で知り合って普通のセンパイと後輩でーす!」

普通のセンパイと後輩は呼び捨てで呼ばないっつーの…

「えーっと。北村あゆな…です。実華の幼なじみで、遥輝センパイとも実華を通じて知り合いました。」
「あゆなちゃんねっ!!よろしくーっ」

そう言って手を差し伸べてきたのは
篠崎センパイ。

「よろしくお願いします…」

いまどき握手って…

「あゆなーっテンション低いぞー」
「実華が高すぎるんですーっだいたい、こんなことしてて彼氏さんに怒れられても知らないから。」
「大丈夫だって。たっくん心広いしっ」
「そーいう問題じゃないって。」
「実華ちゃん彼氏いるんだ?」
「はいっもーすぐ半年です。」
「うらやましいー。あゆなちゃんは?」
「えっ?あー、いないです。」
「じゃあさ、俺とかどう?」
「え、あ…」

パシっ

「ってー…」

どう?っていいながら
私の手を握ってきた篠崎センパイに鋭いツッコミを入れたのは本田センパイ。

「知り合ったばっかの後輩を口説くな。あゆなちゃん、困ってんじゃん。ごめんねーあゆなちゃん。」
「あ、いえ。大丈夫です。」
「あ、もしかして啓太もあゆなちゃん狙い?」
「アホか。何でそーなる。勝手に言っとけ。」

そこまではっきり言われると傷つきますけど…

「あゆなちゃん。何かゴメンね。」
「あ、いえ、遥輝センパイは悪くないです。」

結果はどうであれ
センパイと長くいれる訳だし…

「アイツさ、最近なんか彼女つくることにこだわっててさ。」

「もーすぐ夏休みですしね。その気持ちは分からなくはないですけど。夏休み終わったら体育祭と学園祭とか色々、行事あるし。」
「まぁな。で、学園祭終わったら就活とか試験とかあって卒業だろ?早いよなー…」

そう言う遥輝センパイの視線の先には
本田センパイたちとはしゃいでいる実華の姿があった。

…センパイは、実華に告白とかしないのかな…
そりゃ実華には石井くんがいるし、告白したところで結果は分かってるんだろうけど…

「ん?俺の顔、何かついてる?」
「えっ!?あ、いえっすみませんっ」

ビックリした…
つい、センパイの顔ガン見してしまった…

「ふっ…」
「えっ!?」
「あ、ゴメン。あゆなちゃんってアイツに似てるなーって思って。」
「実華に?」
「うん。何か…小動物みたいだし。」 
「…それってほめ言葉として受け取っていいんですか?」
「まぁ、悪口じゃないな。」
「えー…まぁセンパイが言うなら…ありがとうございます…?」 
「ははっ!!どういたしまして。」

ポンポン…

ドキンっ

笑いながら私の頭を撫でるセンパイの表情は
すごく優しくて
けど、どこか切ない気がして。

この笑顔は多分、私ではなく
私に似てる実華に向けられてるものなんだと
自覚した。