「あれ?早坂先生、オカモンは?」
廊下にたむろしていた一人の男子生徒が私に気付きそう聞いてきた。
オカモンとは岡本先生のあだ名だ。
「体調を崩されて、今日はお休みです。」
「マジ⁇やったー!オカモン話長えんだもん!」
男子生徒は嬉しそうにガッツポーズをした。
岡本先生は話がくどいと校内では有名だった。専攻は理科だが、授業を覗くとほとんどの生徒が夢の中だ。
"今日オカモン休みだって~!"
男子生徒はまるで喜びを分かち合うかのように、教室内の生徒に大きな声で伝える。教室内が歓喜に満ちる。
…岡本先生には申し訳ないが、悪い気はしなかった。
だが、今は仕事中である。私は不謹慎な思いを態度に出さないように務めなければならなかった。
「はい、静かに!HRを始めます。」
教壇に立ち、名簿を開く。