偶然にも今日は3年の音楽の授業がある。

授業の準備を手伝ってもらおう。それで少し話を聞ければ。





「ちょうど良かったわ。今日、3年生の授業があるの。授業でスクリーンを使おうと思うの。倉橋さん、手伝ってくれる?」


「はい、分かりました。」

倉橋さんは特に気にする様子もなく頷いた。




私はなるべく平静さを装いながら倉橋さんを音楽室へと誘うことに成功した。



「あ、そこに置いてもらえる?」

「はい。」

「ありがとう、助かったわ。」

「いえ、大丈夫です。」



倉橋さんは黒板の前にある台に映像機器を置いた。


今のところ、彼女に特におかしなところはない。




いきなり、"あなたは影ですか?"なんて聞くわけにはいかないよね。
直球すぎる。


第一、証拠がない。





授業の資料を揃えながら、私は倉橋さんの様子を伺った。




「他に何か手伝うことはありませんか?」


私の視線に気付いたのか、倉橋さんは私の方を見てそう言った。

一瞬、私はドキッとして、咄嗟に目線をずらした。





「あ、ああ…もう大丈夫よ。」

せっかく音楽室まで連れ出すことに成功したのに…。



ふと、私は彼女の手に目がいった。