…!
そうか!もしかしたら……。
私は急いでショーケースに駆け寄った。
「……あった!!」
左から2番目に少しくたびれたお札があった。本当に捨てられなかったのが不思議だ。
「ありがとう。あったよ!」
「良かったー。先生、すごい必死に探してたから心配になりました。」
女子生徒はニコッと笑った。心から心配してくれてたようだ。
なんて良い子なんだろう。普通ならここまでしないのに。
私は女子生徒の優しさに感動した。
「あの、あなたの名前は?」
「倉橋星羅です。3年です。」
「そう、倉橋さん。本当に助かったわ、ありがとう。」
「いえ、では。」
女子生徒は笑顔でお辞儀をすると、3年生のフロアへと消えて行った。
私は女子生徒が消えて行った方向を見ていた。
あんなに綺麗なのに、今まで知らなかったなんて不思議。
腰まである黒髪はきっちりと揃えられていて、彼女が歩くたびにサラサラと流れた。
小さくて綺麗な顔立ちをしているのに、遊んでいるような感じもない。
容姿端麗とは彼女のような人のことを言うんだろうな、と思った。
そしてもうひとつ私は気になったことがあった。
あんなに綺麗で、家事をしたことがなさそうな彼女の手が
赤く傷だらけであったことだ。