するとパタパタと誰かの足音がする。こちらに近づいてくるようだ。

私はハッとして背後をみた。



「もぉ、こんなところにいた!西野くん、お昼一緒に食べようって言ったじゃない!」


パーマをかけたセミロングの髪。前髪をピンクのシュシュで結んでいる。

ピンクのカーディガンに下着が見えそうなほど短いスカート。


彼女はうちのクラスの女子生徒だった。




「そんな約束したか?」

「したよ~!もぉ、早くっ!」


キョトンとする西野くんの腕を掴んで、女子生徒は甘えた声を出す。



西野くんは確かにイケメンと呼ばれても申し分ない顔立ちをしている。女子が騒ぐのも不思議ではない。


でもまさかこんなことで、現実世界に引き戻されるとは思わなかった。
私はゴホンッと咳払いをする。



「じゃあ、そういうことだから。西野くん、また後で話をしましょう。関野さんも廊下は走っちゃダメよ。」

先ほど自分も走っていただろう…と思いながら、私は女子生徒に言った。



「は~~い。」


女子生徒は私の話を聞き流すような返事をする。
そしてすぐ嬉しそうに"早く行こっ!"と西野くんの腕を引っ張った。



「じゃあ、先生、また。」

西野くんはチラッと私を見て、女子生徒とともに教室の方へ消えて行った。