その天使と出会ったのは、真夜中のことだった。
職場の飲み会での帰り道。私は同僚たちと別れ、しんと静まりかえった路地を歩いていた。
錆びた外灯がばちばちと音をたて点滅している。子供の頃、こういう電球切れ真近の電気のことを"おばけ電気"と呼んでいた。
静けさの中、自分の靴音だけが妙に目立つ。
梅雨目前にした5月。いくら暖かくなってきたとはいえ、真夜中の空気はひんやりとしていて、火照った体が徐々に冷やされていくのが気持ち良かった。
"明日も仕事か…。"
その変わりようのない運命に鬱々とした気持ちになった。
すると、目の前にあるポストの影がゆらりと揺れた気がした。風が吹いたわけでも、動物でもない。
まだ少し酔ってるのかも…。と私は目をこすった。
少し気になった私は立ち止まり、その影をしばし見つめた。
しばらくするとまたその影がゆらりと動く。今度は間違いなかった。