「どうしたの?」


落ち着きを取り戻して話しかける。





私から離れた紅葉は私の顔をそっと触って
「泣くな」と
一言、辛そうな顔で言った。





「何で分かったの?」




「沙恵ちゃんから聞いたよ。一人にしたらまた泣くかもって心配してたぞ?
昨日番号教えたんだよ。何かあったらって思って。

教えて正解だったな」

「そっか…」



沙恵に心配かけちゃったんだ…。





「ちょっと出掛けようと思ったんだけど、その顔じゃ無理だよ…な?」



「え…っと」


出掛けるって…?



こんな顔で誰かに会ったりしたら恥ずかしいし…。






「昨日手伝ってくれた奴ら、呑みに連れてこうと思ってたんだけど。

神谷も居るけど、気分転換になると思ってさ」






神谷が居るなら気分転換なんて出来ないよ…。






「神谷も落ち込んでるぞ?」




「…何で?
あの人と何かあったの?」




「まだそんな事気にしてんのかっ!?
あの時の神谷見たら分かんだろ?


楽しそうにしてたか?嬉しそうにしてたか?」







ちゃんと考えれば分かる。私が怒らせた時よりもっと怒ってた。
手を振り払ってた。


…でも
私も

神谷の手を振り払ってしまった。