「長くここに居たくない。ここに居ると危ないし…。
詳しい事は後で話すから、今は俺の言う事聞いて?
必要な物は全て持て。今から家出する」
「え…?」
聞きたい事は山程ある。
でも誰かが私の部屋の扉を開けて
聞く事は出来なかった。
「わりぃな」
その言葉と同時に三人の男の人がダンボールを持って入って来た。
そして私は言葉を失う。
その中に神谷が居たから。
「神谷は楓を手伝って」
「うん」
手伝う?神谷がここに居る事で動揺してる私を手伝う…?
紅葉と他の人達は部屋を出て行ってしまった。
気まずい。今会える程私は冷静じゃない。
暫くの沈黙を破ったのは神谷だった。
「荷物、まとめようか」
「…うん」
持って来たダンボールを広げて作ると
神谷は困った顔で私を見た。
「何手伝えば良い?」
「あっ…と…
じゃぁ机の上のとか、学校の物を…」
「わかった」
そうだ。今は気まずいとか言ってる場合じゃない。
紅葉の言う通りにしないと。
急いでクローゼットの中の物を鞄やダンボールに詰めていく。
服は少ないし、余計な物は何もない。
全ての服と学校の物、小さいテレビを詰め終わった後、ドタドタッと慌ただしく階段を駆け上がってくる音が聞こえた。