「あ…」

既に神谷は待っていて
いつもの優しい笑顔を向けた。


でも、それを快く受け入れる事が出来ない。





「紅葉が近くに居るんだ。連れて来てって言われたんだよね」


「そうなんだ…」


「元気ないね?
何かあったの?」

気になる事、言うべきなのか、言わないべきなのか
考えてるのに口が勝手に動いてしまう。



「元カノってどんな人だったの?」

自分でビックリした。
言うつもりなかった。



今それを聞ける程私の心境は整ってない。




「何で?」

少し声のトーンが低くなった気がした。




「き…
気になっただけだよ。
どんな人で、どんな付き合いだったのかなって」
こうなればヤケクソだ。




「別に。人に話せる程良い付き合いでもないよ」

「私人と付き合った事とかなくて、だから気になるんだよね」

チラッと表情を窺うと
やっぱり険しい表情で
嫌なドキドキが始まった。




「かえちゃんに関係ないだろ」

その口調は今まで聞いた事なくて

神谷を初めて恐いと思った。







無言のまま小さな公園に着いた。

紅葉とその横に女の人がベンチに座って何かを話していた。




近付いて行くと女の人は私達に気付いて駆け寄ってきた。








「待ってたよぉ」

いかにもブリッコって分かるしゃべり方で私と神谷の間に入って来ると同時に
軽く私にぶつかって私はよろけてしまった。