「ど…
どんな人がタイプなの?」
「一途な子」
少し神谷の顔が曇った。
「かえちゃんは?」
「私は…」
まさか神谷、なんて言えないし。
「紅葉かな」
あながち嘘でもない。
「かえちゃんも紅葉好きなんだね」
いつもの優しい笑顔。
だけどさっきの曇った顔が頭から離れてくれなくて
胸の中のモヤモヤした思いは消えない。
どんな人だったの?なんて
とてもじゃないけど聞きづらい。
だって
顔が曇る前に
眉間に皺を寄せて
少し険しい表情になったのを
私は見逃してないから…。
「もう戻るね…」
泣きたいくらい苦しくて。
彼女が居たって私と会う前の事で。
いくら考えても仕方のない事。
でも苦しい。
何で…?
どうして気になるんだろう。
今居る訳じゃないのに
どうして苦しくなるの?
「楓?どうしたの?」
沙恵が駆け寄ってきた。
「うん?別に何もないよ…」
「先輩と居たんじゃないの?」
「うん。ちょっとね。
何かさ…」
残りの昼休みに
さっきの元カノの話を沙恵に言ってみた。
「う~ん…
それだけ先輩の事好きなんでしょ?
もう終わってる話だし考えても仕方ないと思うよ?」
「うん…」
分かってる。
でもあの険しい顔が頭から離れなくて。
でも気になる…
ううん、あの顔をしたからこそ気になる。
紅葉に聞いてみたら良いのかな?
分からない。私にはそんな経験もないし。
授業もそっちのけでずっとその事ばかり考えていた。