「あ…、神谷どうやって帰るの?」
もう終電もない時間だ。
「うち泊まるか?」
紅葉がコッソリと、内緒で泊めた事が何回もあると教えてくれた。
全然知らなかった…。
まぁ夜中に来ればバレる事はない。
親は私達の部屋に絶対に入って来たりしない。
「そうしようかな」
神谷も何の躊躇いもなく答えた。
何回泊まったんだろう…。
きっと紅葉も親が嫌いだから内緒にしてるのかな…。
「よし、帰るか!」
紅葉が立ち上がると私に手を伸ばして来た。
「なに?」
その手を見つめる。
「たまには手を繋いで歩こう」
優しく笑う紅葉に私は照れた。
さっきの引っ張って歩くのとは全然意味が違う。
「恥ずかしいよ…」
そう言う私を見て笑う神谷。
「紅葉はかえちゃんが大好きなんだね」
「たまには兄ちゃんと手を繋ぐのも悪くないだろ?」
悪い気はしないけど…。まぁ いっか。
「恥ずかしいよ」
何度も言う私に何を思ったか
「こうしたら何も恥ずかしい事ないよ」と、神谷まで私の手を握った。
それも恥ずかしかったけど、自然と笑みが溢れて
三人の外灯が照らす影を見て
手も、心も、温かくなった。