「私お風呂入るから」
紅葉は「一緒に昔みたいに入るか!?」なんて冗談を言いながら部屋へ戻って行った。
ついでに充満した煙も出て行ってほしい。


お風呂は好き。フローリングで寝る時とは違って″今日も終った″そう思えるから。出れば寝るだけだ。
湯気が異次元へ連れて行ってくれた気分になる。
三十分くらいで出て、麦茶でも飲もうとリビングへ行くと母は一人で泣いていた。


こんなのも慣れた。いつだって喧嘩を吹っ掛けるのは母だ。泣くくらいならブツブツ文句言わなきゃ良いのに。

麦茶を一気に飲み干してリビングを出ようとした。
「楓、学校は楽しい?」
顔は一切こっちを向かない。
「うん」それだけ言って部屋へ戻った。


こんな時ばかりそんな事を言ってくる。
私は知ってるんだよ。

紅葉と私がこの家から…
母の前から居なくなって欲しいと思ってる事を。

家事は好きな癖に子供は嫌いだなんて

じゃぁどうして産んだの?もう嫌だ。めんどくさい。


バイト…しようかな。
この家から早く出たいよ…。