「神谷に会いたくないって言ってたよ」
紅葉は追い討ちをかけるように言う。






私が見えないように前に立つサトルさんの肩がフルフルと震えていて
紅葉が面白い事、と言ったのがこの事だと気付いた。







「会いたくない…かぁ。
全部あいつのせいだよ。まじうぜぇ」

弱々しい声から怒りの声へと変わった。




「それだけじゃないだろ?楓から聞いた話じゃ、その前からだぞ?」

「へっ!?その前!?」

二人の会話は続いている。



その途中で紅葉が「あ、約束したから殴らせろ」と一声かけた後ボゴッと音がした。





「もういいぞ」

その合図と共にサトルさんが奥へと入って行き、私は一気に部屋の中が見えてオロオロしてしまった。




神谷は床に寝転がっていて頭を抱えていた。



殴られたんだ…。






その周りには既にお酒の空き缶が散らばっていた。




とりあえず一歩入って見ると、昨日は感じなかったお酒と煙草の匂いが充満していた。




紅葉においでと手招きされて、いつまでも床に附せてる神谷と紅葉の間へと座らされた。




紅葉もサトルさんも口元が緩みっぱなしで本当に面白そう。




私は罪悪感すら生まれてくる。