俺が反応してくれたことが嬉しいのか、『いずみ』と言った男はにこにこしながら頷いた。



「そだよー。『伊純』と書いて『いずみ』。いい名前っしょ?」


「………。」



なんだ、人違いか……。


溜め息をついて、俺は自分の席に座りなおした。


やっぱ奇跡は起こらねぇのか…。


そんな俺の態度に口を尖らせた『伊純』は、また諦めずに俺に話しかけてくる。



「酷いなぁ、青葉。………もしかしてさぁ、別の『いずみ』が気になる?」


「?!……っ、なんだよ、ソレ…」



本格的に苛つきが始まり、とうとう俺は返事をすることどころか、話を聞くことさえ止めた。


この男、一体何者なんだ……?