そしてもう一つ。 俺は和泉の深い深い、ディープな事情を知ることになる。 『和泉くんって、昔から虐待されてたらしいよ』 『可哀想だよね』 『なんで誰も助けてあげなかったんだろうね』 お前らは、知ってたのか? 知っていたのに、助けてやれなかったのか? そんなドス黒い感情が俺の中を絞めるけど、俺に他人を責める権利なんかない。 何も知らず、ただ和泉に笑顔を向けてのうのうと幸せに暮らしてきた自分が。 なにより、憎い。