翌日の放課後、あたしは自分のトランペットを持って音楽室に向かった。


心臓がソワソワと高鳴り、楽器ケースを持つ手が震える。


今更、音楽室を訪れていいのか。


本当に、以前のようにまたトランペットを吹けるようになるのか。


また変な考えだけが頭をよぎる。


あたしはその度に、頭を振って不安を振り払った。


窓から音楽室の中を覗くと、部員達は合奏前の基礎練をしたりチューニングをしたりと、音がパラパラ聞こえてくる。


グルッと中を見渡したけど、長谷川さんの姿が見当たらなくて、音楽準備室のドアを開けた。


「あ……新堂さん」


30代半ばの女性顧問と椅子に座り打ち合わせをしていた長谷川さんが、ドアを恐る恐る開けるあたしを見てすぐに立ちあがり目を丸めた。


「楽器……」


長谷川さんの視線が、あたしの顔から手に握る楽器ケースに下がる。


「あ、うん。今日は、楽器持ってきた」


何だか長谷川さんと目が合わせ辛くて、長谷川さんの足元を見て言う。