「ビックリした……。草太こそ行かないの?あたしてっきりみんなと一緒だと思ってた」
あたしの小声は、大阪湾から聞こえる穏やかな波や船の音に溶け込んだ。
「あー、トイレ行ってたら誰もいなかったからさ」
ハハハと、あたしの隣に来た草太が笑う。
チラリと横目で草太を見ると、草太は美しくオレンジ色に染まる海を眩しそうに見ていた。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
徐々に速さを増す心臓を吐き出しそうになってしまい、あたしはゴクリとつばを飲み込む。
「てか、ここすげーな」
大阪湾を眺めがら、草太言う。
「この場所、デートスポットらしいよ。知ってた?」
草太がニッコリ笑ってあたしを見下ろす。
ドックン……。
その草太の微笑みに心臓を打ち抜かれたあたしは、「し、知らない」と魂の入らない声で言って、草太から目を逸らした。