二人とも、冷たい床の上に重なって崩れ落ちた。



寝転がったまま、雫の両手を手繰り寄せ、


ぎゅっと握り締める。

彼女はしばらく呆然としていたが、


その内、その小さな手を通して、


身体を震わせているのが伝わってきた。


身体を引き寄せ、胸の中に抱きしめる。


僕の腕の中にいる、雫の存在を確かめる。



「・・・死ななくてよかった。」


僕は、いつのまにか泣いていた。


その涙を、雫が自分の頬を擦り寄せ拭ってくれる。




「見て欲しくなかったの。ヒロ君には。あたしのことなんか忘れて欲しかった。」


雫も、自分の目に大粒の涙を浮かべて小さな声で少しずつ話す。



「好きになったから。」



お互いの涙が、交じり合い頬を濡らす。


「…ふふっ」


雫が小さく笑う。



「ママが死んで、あたし自由になったんだと思う。だけど、あたしは」



言葉を詰まらせる。



「あたしは、人の愛しかたがわからないの。」



そう言って、彼女は目を伏せた。