「はーい!お・ま・た・せ~♡」

蒼空の母が、紅茶と手作りのクッキーを運んできた。

「さぁさぁ、疲れたでしょ?沢山飲んで、食べてね~」

「ありがとうございます。いただきます。」

「は~いどうぞ~♡」


優羽は実際に喉が渇いていた。

2時間の道のりを移動したこともあるが、一番の理由は、優羽の人生で経験したことのない出来事を体験中だからだろう。


最強親子に遭遇し、同級生宅にお邪魔してお茶を飲んでお菓子を食べる事を体験中だ。


その間にも最強親子はずっと会話をしている。

「クッキー、お母さんの新作なのー!」

「新作って…本に載ってるんだから新作じゃないでしょー?」

「だからお母さんのって言ったでしょ~」

「じゃあ違う言い方してよね。勘違いしちゃうじゃない。」

「え~じゃあどういう感じにー?」

「……お母さんのニューレパートリー?」

「じゃあ今度からそう言うわね~」


蒼空の母はケラケラ笑い、蒼空は溜め息をついている。


〔知った場面だな…〕



優羽は2人のやり取りを見ながら紅茶を飲んだ。


「次来たときはケーキ作っておくからね~♡優羽ちゃん♡」

「ぶはっ!!」


急に話を振られて優羽は紅茶を吹き出した。


「優羽ちゃん大丈夫!?」

「ゲホッゲホッ…だ…大丈夫…ゲホッ。」

「もー!!お母さんのせいだよ!?」

「あらあら~タオル持ってくるわね~。」


蒼空の母はタオルを取りに席を立った。

蒼空は咳き込む優羽の背中をさすりだした。

その瞬間、優羽は身体に電気が走るような感覚に襲われた。


〔なんだ…これ…〕


神経が高ぶったような感じになった。


そんな状態になった優羽の背中を蒼空はさすってくれているが…。


「……っ!もう…大丈夫…だから!」


優羽は我慢できなくなったのだ。


「本当に大丈夫!?」


蒼空は後ろから優羽の顔を覗き込んだ。


気配を感じて優羽は慌てて横を向いた。


「…なんでソッポ向いたの?」

「…別に?」

「…ふーん。」


蒼空は優羽の態度の意味がわからなかったが、機嫌を損ねたわけではなさそうなのでそれ以上は何も聞かないことにした。


「はい、タオル使ってね~。」


蒼空の母がタオルを持って戻ってきた。


「すみません。ありがとうございます。」


優羽はタオルを受け取り、濡れた部分を拭きだした。




〔助かった……〕




優羽は蒼空の母に感謝しながら拭いた。