「教室じゃないとこだったらいいんだな?」
はぁ⁉
ダメに決まってるでしょ。
エイジの思考回路は一体どうなってんのよ。
とにかく、自分はモテてるんだって自覚を持って欲しい。
いや、持ってるのかもしれないけど、教室でこんな大胆な事をしたら騒ぎになることくらい考えて欲しい。
「いいからとにかく離してよ!」
ドンッ
そう言った後、思いっきりエイジの胸に手を突き立てた。
「うおっ」
びっくりしたエイジが声を上げ、私の背中に回した腕が離れる。
その瞬間床に落ちたカバンを拾い上げ、エイジの方を見ないように後ろの扉へ向かった。
「シオ、待てよ」
「無理、待たない。急いでるの」
「また、逃げんのかよ?」
「…………」
ものすごい注目を浴びてしまっているのを感じ、まっすぐの廊下を俯きながら一気に駆け抜けた。
走っている最中、エイジの言葉が頭から離れずチクリと少しだけ胸が痛んだ。
だけど、今の私には自分の保身が精一杯で。
エイジのせいで嫌がらせを受けるのは本当に迷惑だとそれしか考えていなかった。
エイジの言う通り、結局私はまた逃げてしまったんだ。