名良橋君の視線を辿り、しまったと思う。

そこには、薬が大量に入った籠があったから。



「……貧血って、あんなに薬いるのか?」



バレるわけにはいかない、そう思ったとき。

一ヶ月程前に吐いた嘘を思い出し、それで乗り切ることにした。



「それ、喘息の薬だよ!昔からだから、溜まってるだけ」



無理に隠す必要はない。

でも、真実を知られちゃいけない。

早く話を逸らさないと、と思いつつ、話題が全く思いつかない。

どうしよう、としどろもどろになっていると、ふと隣から優しげな声が聞こえてきた。



「あのさ、頼みがあるんだけど」

「な、何?」

「由羽が、早坂にもう一回会いたいって言って聞かねえんだよ。よかったらまた、遊んでやって」