どうしよう、怖い……!

そう思って目を閉じたとき――



「何してんスか、あんた」



扉の向こうで、名良橋君の低い声が聞こえた。

それと同時に、ドアを叩く音がなくなる。



「あ?なんだガキ」

「ガキはどっちだよ。ダンダン叩いたら近所迷惑でしょーが」

「うっせぇな。何しようが俺の勝手だろ」



外から言い争う声が聞こえ、私は思わずその話の内容に耳を澄ませた。

声色からして、名良橋君はいつも通りの冷静だ。



「お兄さん、新聞勧誘の人だよな。そんな押し売りみたいなことしても、客つかねーと思うけど」

「るせーよ!ガキにそんなこと言われる筋合いは――」

「早坂」



不意に名前を呼ばれ、心臓がどくんと脈を打つ。

名良橋君はきっと何かを伝えようとしてるのだと思い、耳を澄ませた。