ううん、忘れない。

名良橋君は、私に光をくれた人だから。





――ピーンポーン……

玄関のチャイムが鳴ったのは、名良橋君との電話を終えてから20分程経った頃だった。

まさか、ね。

新聞の勧誘か何かだと思い、私は再びベッドに潜り込んだ。

それでも再度鳴らされるチャイムに少し、違和感を覚えた。

新聞の勧誘で、こんなにしつこくチャイム鳴らす?

飛び起き、恐る恐る玄関に近付くと――

――ガタッ……

段差に躓き、物音がたってしまった。

今度はチャイムではなく、ドアが叩かれ始める。



「ちょっとー、いるんでしょー!読朝新聞ですけどー!」



乱暴に叩かれる扉を前に、私はどうすればいいのかわからずに立ち尽くしていた。