あんなの本心じゃない。

梨央さんと幸せに、なんてもう言えないよ。

誰に何を言われようと私は、名良橋君が好きなの。



「……お願いあるんだけど」

『……うん』

「今日、会えるかな。1日、家にいるからさ」



好きとは言わない。

別れがつらくなるのはわかってるから。

名良橋君の笑顔をもう一度見たい、ただそれだけ。



『わかった』

「何時でもいいからね。梨央さんの体調マシになってからでいいから」

『……ん』



じゃあね、と言葉を残して電話切った。

会ったら、何を言おう。

気まずくならないかな。

ちゃんと笑えるかな。

名良橋君の顔、ちゃんと見れるかな……。



「名良橋君のこと、死んでも忘れたくない……」