診察の度に増えていく薬に、私はもう長くないのだと教えられる。

もう、“また”なんて言えない。

明日死んだっておかしくないの。



『……』



黙りこくってしまった梨央さんの後ろから、ドアの開く音がした。

そして聞こえてきた、名良橋君の声。



『何してんだよ、梨央!』

「名良橋く……」

『……早坂?』



いつも通りの名良橋君の声が耳元で聞こえ、目の奥が熱くなる。

名良橋君が梨央さんを大切にしてること、わかってる。

だけど、学校が始まる前に看病に行くとか、私に作ってくれたお粥を梨央さんにも作るとか――それが嫌だって思うのは、私の心が狭いから?



「……それでも、やだ……」

『え?』



梨央さんが戻ってきてよかったね、なんて言わなきゃよかった。