梨央さんは、私に名良橋君を譲れないと言ったときと同じ声色で話す。

これ、牽制されてるんだよね……。



「あの、名良橋君は」

『あぁ、由貴なら今キッチンでお粥作ってくれてるの。由貴って料理も出来るの、すごいよね』

「……そうですね」



まるで、何も知らないでしょって言われてるみたい。

料理が上手なことは知ってる。

だけど、昔から一緒にいた梨央さんには勝てないよ。

でも。



「……名良橋君に、代わってください」

『だから、今いないってば。どうせいつでも会えるんじゃん。そのときでいいじゃな――』

「今じゃなきゃ駄目なんです!」



今じゃなきゃ、もう素直になれない。

神様はもう、私に明日なんか約束してくれない。