だけど、叶うなら。

この我が儘が、届くなら。

最後の瞬間まで、名良橋君といたいんだ。



「……電話してみよっかな」



昨日の今日で気まずいかもしれないけど、私が素直にならなきゃ何も変わらない。

そう思い、時計を見る。

授業はまだ始まってないから、大丈夫だよね。

アドレス帳から名良橋君の番号を呼び出して電話をかける。

5コール目で呼び出し音が切れた。

だけど、



『もしもしー?』



電話口の向こうから聞こえた声は、名良橋君のものではなく。

どうして、と言う考えばかりが頭の中に広がる。



「……なんで、梨央さんが……?」

『あ、わかった?私も退院出来たんだけど、まだちょっと体調悪くって。今親戚の家にいるからあんまり甘えらんなくて、由貴に来てもらったんだよね』