こんにちは!黄崎涼子です。

ただ今絶賛、マジギレ中だよ?・・・。



あたしの回りを纏っている空気は冷めている。
普段から冷凍庫並みの温度を保っているのに、今は絶対零度と言える。

断言できる。



「はぁぁああん??瀬永唯!誰が馬鹿だってぇ?」



「黄崎サン」



あたしの名前を即答するこの男を何とかしてくれ。

一方の瀬永唯は、あたしの苛立ちを察しているのか否か。
確実にあたしを怒らせるために言っているに違いない。


この顔は確信犯の顔だ!



「ちょ、涼子落ち着いて?いくらキャラかぶってるからってそこまで怒らなくても・・・。ね?」



加奈があたしの肩をぽんっと叩いて、落ち着かせようとしているが、その言葉で再びひらめく。

そうだった。



「あんたねーっ!この学園にSは一人で十分なのよ!!」



「S?俺ぜんぜんSのつもりとかないんだけど?」



「そういう態度が腹立つのよ!いっぺん、死ねば」



「黄崎サァン?人権問題、ってわかる?」



こんのクソ男ぉぉおお!!!


瀬永唯はあたしへにやにやとしながら、中学の社会の教科書を見せてきた。
なんでそんなものを、あんたが持ってるんだ。



「ほーら!ゆー君も挑発しないでっ」



「挑発~?瀬永唯、あんたそれで挑発してるつもりなの~?」



目を細めてあたしは瀬永唯を鼻で笑う。

というか、加奈は気づいてるんだろうか。


加奈が一言言うごとに、この口論がヒートアップしていることに。



「黄崎サン、しゃべらないでくれる?口からドブみたいな臭いが・・・っ」



「!!・・・、瀬永唯こそ、身体中からクソの臭いがするわ」



「――っ―――」



「――――!――」









それから、2時間目の残り30分は、耳を塞ぎたくなるようなひどい口論。

さっきまで黄色い声で、騒いでいた女子もだんまり。

男子はというと、呆れた視線で騒ぎの中心の二人を見る。



「もぉ~~っ!二人ともやめてよ~」



「「加奈は黙れ」」



しかし、特に注意するわけでもないこのクラスはどうかしている。


そしてこの一件がのちに、架翠学園の歴史を揺るがす―――



『どSコンビ』の誕生―――と言われるのは、それから一週間後。




入学式から二ヶ月の今――、


もうすぐ初夏の6月の風が吹きぬけようとしていた――。