こつこつこつこつ
こつこつこつ

こつこつこつこつ・・・



「っなんでついてくんのよ!」



「自惚れんな。俺は自分のクラスに行こうとしているだけ」



「じゃあさっさと行けばいいじゃない、瀬永唯!」



「ほんとに。そうしたいのは山々なんだけど、黄崎サンと俺、同じクラスなんだよね」



ショックーとか呟きながら、あたしの1メートル後ろをついてくる瀬永唯。

先生、どうして主席と次席が同じクラスなんですか。
せめて隣のクラスにしてほしかった。

切実に。


そして、あの長かった螺旋階段も過ぎ、自分のクラスのドアの前まで来てしまった。

・・・瀬永唯と一緒に。


ガララッと勢いよくドアを開けたら、



「あっ!ゆー君に涼子~っ、どこ行ってたの?おかえりぃ~」



ガタンと大きな音を立てて立ち上がる加奈。
そんな加奈に視線を送りながら、ぽかーんとしているクラスの一同にため息をつく。


瞬間。



「ちょ、瀬永くんだよ!」



「きゃ~~っ!なんで来てるのぉ!」



「やっばかっこよくない~~?!」



「アタシこのクラスとか幸せぇ」



クラスの女子がきゃっきゃと黄色い声ではしゃぎ出した。
あたしは瞬時に耳を塞ぐ。

本当に迷惑極まりない男だ!



しかし当の本人も笑ってはいるが、少し笑顔が歪んでいる。



「うるせぇなー。ちょっと君ら、黙ってくんない?」



「「「きゃあ~~~っ!」」」



え!今のどこにきゃ~要素があったのか教えてほしいな。

そんなことを考えながら、自分の席に座る。

もちろん、今の今まで授業をしていたわけだから、教師が妨害したあたしたちことを、少し睨んではいたが“主席”と“次席”には、何も言えやしない。


ちなみに瀬永唯は、最悪なことにあたしの右隣。



「本当ウザイわー。黄崎サンあの女子何とかしてくれない?」



「無理。ごめんね、何とかしたいけど、瀬永唯の顔を見てると吐き気が・・・うぇ」



「冷たいなー」



わざと吐く真似をして、黒板の文字をカリカリと白紙のノートに移していく。

隣の瀬永唯は、ふぅ、とため息をついて、馬鹿にしたように言った。



「ああ、悪い。主席の座を俺に取られないために、必死でお勉強中だった?馬鹿はバカなりにがんばってるって、このことを言うんだな」



ざわっっ!!



クラスの空気が一気に冷めた。