永「美桜ちゃんにはいつも負けるな」
原「だな」
「そうですか?」
永「あぁ…」
原「あっ、土方さん頼んだぜ。」
永「自分の気持ちを大切にするんだぞ」
「はいっ」
永倉と原田は自分の歩む道へと旅立った―‐
美桜は二人の無事を願っていた―‐
慶応四年 四月―‐
「近藤さん、いるか?」
土方が近藤の部屋に入ってきた。部屋にいた近藤と美桜は土方が厳しい表情をしていてこれは良からぬことがおきたと悟った。
「何があったんだ。トシ」
「敵に囲まれている」
「…っっ」
確かに兵に囲まれている。
「近藤さん、俺がここを守っている間に逃げてくれ」
「いや私がいこう」
「「「…っっ?」」」
「それはできない」
「局長の命令でもか?」
命令と言われて土方は渋々承知した。
「土方さん行きましょう」
横にいる斎藤が促す。
「…あぁ」
「美桜ちゃん、みんなを頼んだよ」
最後の近藤の言葉は悲しげでなぜか寂しく思えた。
「はい。命に変えても」
「命にはかえなくてもいいよ。自分を大切に。」
「はい。必ず」
**局長side**
お前らに生き残って欲しい…
お前たちなら本当の武士になれる
そう信じている
お前らは生きろ―‐
とし、最後までごめんな。お前に新撰組は任せた。あとは頼む。
お前らを信じている―‐
逃げる途中敵方の浪士にあった。
土「お前らは先に行け」
浪「「「はいっ」」」
「…」
仲間が答えて走り去っていくなか私は動けないでいた。
土方は浪士をどんどん斬っていく。
土「美桜、お前も先に行け」
「…」
二人しかいないこの空間がざわめく
「その…めいれいは…ききません」
土「なに?」
「貴方のそばにいたい」
あなたを失いたくない…その言葉が出る前に美桜と土方は一番近い距離にいた。
土方が美桜を抱き締めていたのだ。
土「お前は俺から離れるな。ずっとそばにいてくれ。お前を失いたくないんだ。」
自分が言いたかったことを土方が言ってくれた。
自分と同じことを考えていると思うと嬉しかった。
土方の抱き締めた手は大きく力強く感じた。
「私はあなたをおいてどこにもいかない」
もう空は茜色に染まっていた。
その時、声が聞こえた気がした。
「とし」
はっきりと力強い近藤の声だった。
たくさんの奇跡の中にわたしたちがいることを身をもって知った。
新撰組の崩壊は止められなかったのか。
公開が渦巻くなかで美桜と土方は立ち尽くしていた。
「としを頼んだ」
そう言った近藤の顔を思い出す。
悲しそうででも優しくていつも優しかった近藤さん。
ありがとう―‐
感謝の言葉しか思い当たらなかった。
土方が旧幕府軍の先鋒軍の参謀に推薦されたのは桜の咲き乱れる春だった。
夜半、今日は満月だった。隊士は皆眠っている。
土方は自室で物思いに耽っていた。
「土方さん―‐」
美桜だった。
土「まだ寝てないのか」
「はい、すいません」
土方は優しそうな顔をしていた。
土「次の戦が近い。お前も休め」
その言葉が嬉しくて美桜は土方の命令を素直に受け止めた。
「失礼します」
慶応四年―‐四月末。
顔色が悪く、少し痩せた男の姿があった。
それは―沖田だった。
沖「近藤さんが死んだ?」
沖田以外の隊士にもこのことはしれわたっていた。
沖「僕がいたら。病気じゃなかったら…」
美桜に病気を治して貰いたいと言う気持ちが無いことはなかった。
だがリスクが高すぎる。
沖「自分の命より仲間の命でしょ」
沖田がぼそっと微笑んだ。
離れの屋敷に近寄るものはいない。
沖「新撰組に戻りたい。」
沖田のせめてもの願いだった。