(んっ……?)

いくらまっても刀は降りてこない。美桜はゆっくり目を開けた。

「土方さん…?」

そこには土方さんがたっていた。

「すまんがこいつは俺らの仲間なんだよ」

「幕府の犬が僕にかかってくるのか」

「幕府の犬はなぁ。幕府に忠実なんだよ。それに自分達を誇りに思っている」

「誇りの字を間違っているんじゃないか?」

「どういう意味だ?」

「埃のように汚くはかないものたちのことだろう?」

「なにぃ?」

土方は怒りに身を任せて剣を振った。

だが桜鬼は少し離れて煙だまを投げた。土方の体は痺れて動くのもきつい状態になってしまった。


「つっ……。」

桜鬼は止めをさそうとした。

「だめーーっ」

美桜が二人の間に入ってきた。
「美…桜?」

桜鬼は悲しそうに美桜をみた。美桜のお腹を刀は通り抜けていた。だがまだ美桜に息はあった。

しびれがとれた土方は美桜を抱き抱えた。

「白神…」

「私は…大丈夫…です…すぐになおる」

桜鬼は姿を消していた。

「私は…土方さんに…美桜ってよんで…ほし…い…な」

「美桜。屯所に帰るぞ」

「はい…」

美桜は意識を手放した。



私は死ぬの…?

『美桜ー‐』

白幸神さま…?

『美桜。貴方はまだあの方達を見届けなくてはならない。』

……。

『あの人達を見届ける覚悟はあるの?』

……はい。

『そう。並ば早くあの人のもとに帰りなさい。ほらよんでるわー‐』

ーーーーーーーー‐‐


「……桜…」

だれか私を呼んでいる…

「美桜っっ」

「土方さん…」

土方さんは私を抱き締めていた。

「死ななくて良かった」

「…」

「俺より先に行くな」

「…はい」

美桜と土方は少しの間、抱き締めあっていた。


美桜が復帰するときはやはり宴があった。たぶんみんな飲みたいだけだろうが…

総「さぁさぁ、美桜ちゃんも飲んで飲んで」

美桜は少しお酒が怖かった。

平「大丈夫だって」

皆の押しに負けて美桜はお酒を口にしてしまった。

十分後ー‐

「土方しゃぁぁぁん」

美桜はよったら土方に絡むらしく…

土「総司。美桜に酒飲ましただろーっ」

総「すいませんって言うかいつから美桜って呼んでたんですか?」

永「ほんとうだな」

原「もしかして二人は恋な「違うーーーっっ」

美桜はと言うと「ちがうの?」と泣きそうになっていた。

土「あのぅ…だな…」

斎「…」

近「そうだったのか!?」

土「だから違うって」

「ちがうの?抱き締めてくれたのに」

土「あれはだなぁ…」

総「土方さん、もう手を出してたんですか?」

平「最低だぜ」

斎「…」

土「あれは勢いだ」

総「勢いで手を出すんですね…?」

土「いや…それはだなぁ…」

原「見損なったぜ」

永「だな…」


土「ちがうつってんだろぅ。っておいっ」

土方が説明していると美桜は土方の膝に乗っていた。

土「///?」

突然、美桜は土方の方を向いて「大好き」っと飛び付いてきた。その勢いで土方と美桜はキスをする形になる。

土「ーーーっっ」

近藤は驚いていたが幹部の皆はやっぱり恋仲何だと勘違いしているのだった。

それから土方が苦労したことは言うまでもない。

幹部の沖田、斎藤、永倉、原田、藤堂、と近藤だけだったのが幸いだった。



これからも美桜は土方に迷惑をかけていくだろう―‐


慶応三年 三月末ー。

伊東が分離すると言い出した。伊東についていく隊士の中には平助と斎藤がいた。


「斎藤さん…」

「…」

あまり伊東と面識のない斎藤がなぜ伊東についていくのか美桜は知りたかったが聞けなかった。

「ここでの桜を見るのも何度目だろう…」

「…」

「違う世界を見てきたいと思う…」

「…」

斎藤が去っていくのを美桜は見つめていた。


夕方、庭を散歩している藤堂がいた。

「平助くん…」

「美桜。」

「なぜ行ってしまうの?新撰組が嫌いになったから?」

「新撰組は大好きだ」

「…」

「俺は幕府ではなく、京のみやこをまもりたいんだ。」

藤堂の目は決意の色に染まっていて美桜は止めることができなかった。舞散る桜のように散って行きそうな気がして怖かった。


三月二十日ー。

伊東たちは屯所を出ていった。

このとき美桜は嫌な感じがしていた。

(平助くん…斎藤さん…)