次の日、土方は山南の屍と倒れている美桜を見つけた。


土「山南さん…」


彼の葬儀は美桜が眠りから覚めたあと、執り行われた。

「「「………」」」

皆が山南の死を悔しんだ。


土(山南さん…貴方は新撰組に必要だった。)












山南は自分の誠を貫き通して亡くなったー。






山南が亡くなってから四ヶ月後ー。

沖田の病は進行していた。


総「けほ……ごほ……」

「沖田さん…。」

総「風邪を拗らせちゃったらしいだ」

「私が舞って…「止めてよ」

美桜が言う前に止められた。

「ただの風邪だからすぐなおるよ」

そう言った彼は悲しげな顔をしていた。だが決意の顔でもあった。



屯所も西本願寺に移し、落ち着いてきた。そんなとき、近藤が隊士を皆集めた。

近「徳川家茂公が上洛されると伺い新撰組は警護に当たれとの要請を受けたまわった」


土「其にともない、隊士の編成を行う」

「「「はいっ」」」

近「俺とトシ、一番隊及び、三、四番隊それから…」

編成を聞くと皆が退出していった。

近「美桜ちゃん」

「はい…」

近「君も警護に当たってくれ」
「良いんですか?」

近「看護も必要だしね」

「ありがとうございます」

土「足を引っ張るんじゃねぇぞ」

「……はい」

美桜も警護に当たることになった。



当日美桜は土方の小姓として警護に当たっていた。

「白神。斎藤に伝えてきてくれ」

交代の時間が来たので、美桜は一人、斎藤のいる庭の方に走り出した。

壁と壁に挟まれたところでふと気配を感じる。

それは少し美桜に似た男だった。


「だれ…?」



「君が白神美桜?」

「そうですが…」

「やっと会えた。我妹。」

彼の言葉に美桜はハッとした。
「兄様なの?」

「あぁ、そうだ。私の名は白神桜鬼。」

「…」

「お前を迎えに来た。」

「えっ…」

「お前はここにいてはいけない。いつ滅びるか分からない幕府についていくことはない」

「あの人たちは私を必要としてくれてる…」

「実の兄より幕府の犬についていくのか」

「あの人達を…あの人を守ると誓った」

「なぜ僕についてきてくれないんだ…」


そう言うと桜鬼は美桜に刀を向けた。

「ついてこないと言うならここで殺してしまうよ」

「…」

「お願いだ。ついてくるといってくれ。」

「嫌です」

彼は寂しそうに刀を振り上げた。美桜は目をつぶって刀が降りるのを待っていた。


(んっ……?)

いくらまっても刀は降りてこない。美桜はゆっくり目を開けた。

「土方さん…?」

そこには土方さんがたっていた。

「すまんがこいつは俺らの仲間なんだよ」

「幕府の犬が僕にかかってくるのか」

「幕府の犬はなぁ。幕府に忠実なんだよ。それに自分達を誇りに思っている」

「誇りの字を間違っているんじゃないか?」

「どういう意味だ?」

「埃のように汚くはかないものたちのことだろう?」

「なにぃ?」

土方は怒りに身を任せて剣を振った。

だが桜鬼は少し離れて煙だまを投げた。土方の体は痺れて動くのもきつい状態になってしまった。


「つっ……。」

桜鬼は止めをさそうとした。

「だめーーっ」

美桜が二人の間に入ってきた。
「美…桜?」

桜鬼は悲しそうに美桜をみた。美桜のお腹を刀は通り抜けていた。だがまだ美桜に息はあった。

しびれがとれた土方は美桜を抱き抱えた。

「白神…」

「私は…大丈夫…です…すぐになおる」

桜鬼は姿を消していた。

「私は…土方さんに…美桜ってよんで…ほし…い…な」

「美桜。屯所に帰るぞ」

「はい…」

美桜は意識を手放した。



私は死ぬの…?

『美桜ー‐』

白幸神さま…?

『美桜。貴方はまだあの方達を見届けなくてはならない。』

……。

『あの人達を見届ける覚悟はあるの?』

……はい。

『そう。並ば早くあの人のもとに帰りなさい。ほらよんでるわー‐』

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「……桜…」

だれか私を呼んでいる…

「美桜っっ」

「土方さん…」

土方さんは私を抱き締めていた。

「死ななくて良かった」

「…」

「俺より先に行くな」

「…はい」

美桜と土方は少しの間、抱き締めあっていた。