文久三年―‐
凍てつける寒さがます十二月末。
先ほどから追ってくる浪士達が近づいて来る。
白神 美桜は意を決して路地裏に入る。
「まてぇぇぇ~」
浪士の一人が叫んだ。声が近い。美桜はとっさに物陰に隠れた。
(見つかったらどうしよう)
浪士が近づいて来る。美桜は目を瞑った。
「そこの物陰にいるぞ」
(ばれた)
ゆっくり近づいて来る。浪士たちが美桜の目の前にたった。
(殺される)
刀の音がする。死を覚悟した。
ぎゅっと目を閉じたが痛みが来ない。それどころか浪士たちは倒れていた。
「斎藤、回りは片付けたか」
「はい。副長」
すると副長と呼ばれる男は美桜を見た。
「大丈夫か。」
「……」
答えようとしたが声が出ない。だから美桜は頷いた。
「そうか。一応屯所に連れていく。」
(私はどうなっちゃうんだろう…)
私は緊張の糸が切れたのかそこで意識を失った。
―‐
目をさましたら見知らぬ天井が目に映る。ここは屯所なのだと美桜は思った。
突然、襖がスッ―と開いた。
「よく眠れた?」
入ってきた男は陽気に答えた。
(昨日は居なかった人かな)
「はい。有難うございました」
「君喋れるんだね。まぁいぃや、少しついてきて」
「はい」
美桜は男の後を追った。
外はもう明るく少し暖かく感じた。
ガラッ―‐
大広間書いている部屋の襖を男が開けた。声もかけずに。
「総司。お前は襖を開けるときに声も掛けれないのか。」
あきれたように言う副長と呼ばれる男。
(この人、総司って言うんだ。)
「で、君は何であんなとこにいたのかな」
副長の隣にいた局長に言われた。
「それは―‐」
「無理にとは言わないぞ」
局長たちの優しさに美桜は全部を打ち明けようと思った。
「一ヶ月前―‐
「一ヶ月前、私の母が死にました。病でなく、寿命。母はまだ38でした。母は死に間際に白神家の長男の白神 桜鬼の話と白拍子の舞によって傷や病を癒す力があると聞きました。私は天涯孤独の身となりました。だから桜鬼を私の実の兄を探しに参ったのです」
「ほぅ、傷が治せると」
局長がいった。
「はい」
局長の手の傷が見えた。
(今舞を見せたら信じてくれるかも)
「今から舞を見せます」
幹部の者達も呼ぶことになった。
「桜の華が散り行けば春は過ぎて癒しとなりけるそれが恋だと知り行けば春はまた訪れ消える―‐」
ポッゥと光が放たれ局長の手の傷が消えた。すると局長がいいだした。
「ほぅ、名はなんと言う?」
「白神美桜です」
「美桜ちゃんこれからここで兄を探さないか」
「えっ」
「おなごが一人は危ないからここ新撰組で一緒に住まないか」
「えっ…あ…はい」
「そうか今日は宴だな。私は局長の近藤勇。よろしく」
「はい」
「でっこっちが歳、いや土方歳三だ。副長だよ。あとは自分で挨拶をしなさい」
「「「おう(はい)」」」
この部屋を出ようとしたとき
「白神、俺藤堂平助。よろしくな」
さっきの小さい男がいった。
後ろで長い髪を高いところでくくっている。そして少年に近い。かわいい顔立ちだ。
「あっ、平助ずりぃ~、俺は原田左之助だ。」
背の高い男がいった。
前髪は顎まであって後ろ髪はそんなに長くなく前髪と同じくらいにあう。やさしそうだ。
「俺は永倉な。永倉新八」
がたいのよい男がいった。
髪は短髪でツンツンしている。三人の中では一番背が高い。
「私は斎藤一。」
無口なこの人は髪をしたで緩く結んでいる。
「おい。お前ら何してる」
さっきの土方と言う人がたっていた。
土方は前髪は顎まであって髪が長く後ろで耳の高さで結んでいる。
「みんな騒がしすぎ」
総司と呼ばれる男がたっていた。総司は髪は短く上半分をくくっている。
平「あっ、総司」
総「僕は沖田総司だからね」
みんなわいわいいっている。
(騒がしいところだな。)
総「声に出ちゃってますけど」
桜「すっ…すいません」
こうして新撰組との日々が始まった。
半年は穏やかに暮らしていた―‐
幹部達が呼び出された。
土方が入ってきた。
「古高が吐いた。」
「長州は天子様を連れ出すそして京に火を放つらしい」
土方の話は恐ろしいものだった。
「あいつらバカなんじゃないの」
総司があきれる。
土方は
「今日、会合を開くという噂を聞いた」
と表情を厳しくした。
「会合を開くのはどこだ」
近藤が聞いた。山崎と言われる男が降りてきた。
「四国屋あるいは池田屋のいずれかだと思います」
「よし。トシ、隊士達を集めてくれ」
局長の名で幹部は動き出した。