他のお客さんは、お喋りや食べることに夢中で気づいていない。


だ……誰か助けて――っ!!



……と、心の中で叫んでもダメに決まっていて、ついにカフェの外まで引きずり出されてしまった。


やっと身体が自由になり、パッと振り返って相手を見る。



……あ!



「奥原、朔……」


今朝の怪しいカッコの奥原朔だった。



「知紗ちゃん、約束破ろうとしたね?」


サングラスにマスクだと表情が分からないから、なおさら怖さが増している。


知紗ちゃんって呼ばれてることも、なんでこいつがカフェにいたのかも考えられなくなってしまうほど、あたしは怯えていた。