思い切り蹴られたボールは、ゴールへ放物線を描きながら飛んでいく──…ことはなく。
ボールの軌道は誰かが食い止めたおかげで反対方向へ飛んだ。
───パシャッ
見事ゴールを防いだ彼を見て、
ついシャッターを切ってしまったんだ。
それは──…篤樹だったから。
「うわ、写真撮っちゃった…」
これをお母さんと千尋に見られたら、からかわれるに決まってる。
そう思って削除ボタンへ指を置いたけど。
「消したくないなー…」
あたしが撮ったのは、篤樹がボールを飛ばしてから笑顔になった瞬間だった。
──…なおさら消せないよ。