「ありがとうございました!」
マネージャーさんにお礼を言って車を下りる。
「いーえ、気を付けてね」
家まで送ってもらうなんて悪いから、最寄り駅で下ろしてもらったんだ。
「……知紗」
朔が、窓から少しだけ顔を出してあたしを呼んだ。
「ちゃんと伝えろよ?」
「……っうん」
伝えろよ、朔がそう言ってくれたら、あたしは大丈夫な気がした。
「俺みてぇにフられたら電話よこせよ?……じゃあな」
窓が閉まる直前、一瞬見えた朔はいつも通りの意地悪そうな顔をしていた。
その顔ですら悲しそうに見えたのは──…あたしの思い違いなのかな?