「地面にお弁当置こうとするわ、名前聞いたら『名前を教える必要あります?』って言われるわ……」


思い出したように笑う彼を、ただボーッと見るだけのあたし。



……そういや、そうだったね。


名前教えたくなかったし。


男と仲良くしたくなかったし……そう、今みたいな状況が信じられないし。



「あたし……おもしろいって言われたの初めて」


『なによ、それ』ってにらんでやってもよかったんだけど、それよりもスルッと出てきた言葉がこれ。



「ハッ、そーなんだ?なんか嬉しいなー、知紗の意外な一面!みてぇな感じで!」


また屈託なく笑うヤツを直視出来なくて、うつむいた。