右のポケットに突っ込んだ手に
触れるのは幾枚かの小銭
左の胸のポケットの中には
煙草とライター……知ってる
右のバックポケットには
何枚かの札が無造作に
左のバックポケットには
大して使わない携帯
夢の入れ場所を探して
最後に残った左のポケット
ゆっくりと手を差し入れると
埃が僅かに手に触れる
何も入っていないポケット
埃だらけのポケットが一つ
せめてそのポケットから
埃を摘み出して風に手渡す
いつか入れるであろう
夢の場所を空けておかなければ
たったそれ位が、今の俺の
僅かな誇り
たったそれだけの
小さな誇り
笑夜