深 深 深 と降り積もる雪の上を、此処まで辛うじて踏んで来たのだ

辺りは白色に覆われ、薄い絹の裏側から当てた光のように、程良い明るさが目には優しい

とはいえ、耳障りな風は、ごうごうと無駄に脳を働かせるような音を響かせ、煩わしい


─風の音はどこから発せられているのか…?


此処にまた、無駄な思考を費やすが、あまりの耳の痛さに考えるのを止めた



振り返らなくても、今来た道にはもう、自分の踏んで来た足跡は残っていないであろう事はわかっている

ごうごう深深と冷たく重い降り物が、瞬く間に覆い被さり、『今』だけを残すのだ

過去の歩みはこうも簡単にかき消され、ただ…今だけの自分が白い大地に立っている

見渡す限り真っ白な此処には、先行く道も、足跡すら埋め尽され、ポツリと佇む自分の立つ場所が


『今』だ