上流から流れ来る水の群れ
岩場にぶつかり
段差で泡立ち
ザワザワと音を立てながら
しかしまだ視界から消えぬ内に
地は穏やかな平地になり
水は音もなく緩やかになる
流れてはいるのであろう事は
水面の揺らめきで辛うじてわかる
激しく泡立ち音醸し出す水
ゆらゆらと煌びやかに漂う水
どちらも同じ水の群れ
これが流れに身を任すと云う事だ
やがて群れは巨大な幅を造り
大海原へと辿り付くのだ
やがて性質すら変化させ
上も下もなく引力に留まる
それでも尚、波になって
大きな流れに身を任す
更には太陽に乾かされ
天に昇り、また留まり
恵みとなるのを繰り返し
ただ繰り返し待ち続けるのだ
次から次へと流れ行く水の音を
ただ目を閉じたまま聞き
そんな事を考えている俺は
流れを止めた水溜まり
どれだけの歳月を股にかけようと
激しくも緩やかにも
形や性質すら変えようと
留まらない水の群れは恵に変わる
留まるだけの水溜まり
いつしか腐り濁るのを待つだけ
いっそ乾ききる事が出来れば
天に漂い、天に留まり
またやり直せるものを……
笑夜