新緑を携え幾重にも重なる
あの森の住人達の名は木
彼等が地中深く張り巡らせる
根を見ることの出来ない俺
侵略を携え幾度となく屈す
あの街の住人である俺の名は蔓
アスファルトに這い巡らせる
根の在処すら忘れてしまった蔓
驕りがあったと云うなら
悔い改めるので諭して下さい
自ら幹に斧を振るい
芯が折れ倒れ地を這う蔓
其れでも外れない足枷を
引きずりながら慣れを待つ
足枷を重石にただ其処に這う蔓
根は既に忘れ、芯を無くした蔓
養分を欲さず、日光を嫌う
花を咲かさない、根っこの無い
其れでもまだ枯れて行くのは
恐がり怯える様は滑稽
ならばいっそ……
更に足下に『木』を『加え』
足木加を登って行く工夫でも
鑑みて見れば倒れずに済む
枝葉を広げるあの木の傲慢を
真似る猿でも飼えばいい
どうせ脳等邪魔なだけだと
解っているなら餌にでもして
とは言えあの森林の中では
幾重と重なり支え合う木
羨ましいなら木に巻きつき
貪欲にも木を這えばいい
平地に只一本
身動きの取れない
這うだけの蔓
張った根も見失い
それでも這う俺の名は蔓
笑夜