とても緩やかな風に
とても優しく煽られ

桜の花びらがたった一枚
俺の横を静かに通り過ぎた

ちらちらちらと、
表と裏を交互に翻しながら

ゆっくりと通り過ぎ
着いた先はアスファルト


何れこの薄い桃色は
くたびれ色を褪せるのだろう

あの枝から剥がれ落ちた時
すでにその命を散らした花びら

憂う程、僅かな時を
優しく摘み取られた儚い桜

桜の花びら、寂しくも只一枚

何故咲いたのか?
…と尋ねるのはあまりに無粋


せめて、俺に最後の姿を
見せる為に咲いた花びらだと

そう思っておけば
散り甲斐も僅かに無くもない


咲く事こそが本当の意味だと
気付きもしない俺一枚


せめて誰かの胸に残る
あの花びらの様にあれば……





笑夜