目の前に咲き誇った桜
視界と思考を奪われる俺
桜色に隠れて跳ねる影
とっさに浮かんだ鳴き声
影は枝達を跳ねながら
頂上の一番細い枝の先に
ぴょんと軽く飛び移り
風に揺られて蒼天を仰ぐ
鶯を連想するも予想は
当然の如く軽く覆される
チュンチュンと鳴く声
都会の常識はそれで良い
桜に雀、風に揺れる枝
見とれる俺の心も揺れる
ふと強い風が桜を煽り
舞った花弁が作る桜色の
大きな幕が目前を隠す
次の瞬間、雀は姿を消し
彩りの一幕を降ろした
俺の人生、今の章の幕は
当分は降りそうにない
翌日の車中、開けた窓に
桜の花弁が一枚ふわり
助手席に舞い降りた花弁
ささやかな癒やしの中
生きてりゃこんな偶然も
時には得られるのだと
助手席に花弁を乗せつつ
アクセルを軽く踏んだ
閉幕はまだまだ先の話だ
何れまた幕は開くから
桜の花弁
それまで乗ってていいよ
笑夜