一人、深夜に車を走らせるんだ。
正面に月が見える道を選んで……
見慣れたネオンは深夜も消える事なく、いつしか見慣れないそれへと移り変わって行く。
カーステレオのボリュームはオフがいい。この空間に音は要らない。
視界には赤いテールランプと白いヘッドライト。後は、月とハンドルが視界にあれば、何というか……落ち着いていられる。
俺の思考は極僅かな指示で左足と右手を操り車を走らせる。
そして残りの大半を悩みに使用する。
いつも。いつもの事だから。
あまり考え過ぎるなって?
俺が無駄に思考を働かせるのは、今じゃ飯を食うより生理的になってしまった。
時に食欲を上回り、時に睡魔を退け、時に性欲を萎えさせる。
欲求をも上回る思考の本能。
そんなもの、望んでなんかいないのに。
そんなもの、欲してなんかいないのに。
そうやってまた脳の支配の下、左足はアクセルを、右手はハンドルを、俺自身は想いを動かしながら、車を走らせる。
目的もなく、行くあてもない、ただ続く道の上。
操縦しているのはいつも思考。
ただ……、月の灯りは気になるのだけれど……
「ここはどこだろう……な」
笑夜