掌をまじまじと観察してみる
五本の指はしっかりと伸び
自在に折れ曲がり大きく開く
平らな中に深く刻まれた相
複雑に入り組み枝葉を広げる
この溝にはそれぞれに与えられた
確かな役割があるのだろうか
その役割を知らず無意識に
当たり前の様に使う俺
今までそうやって色んな物を
沢山掴んで来たんだ
なのに今更こうやってじっと
見もしなかった掌をじっと
まじまじと見つめている俺
何も掴めていないからだ
何も掴もうとしてないからだ
掌の相を確かめるように
ゆっくりと閉じて作った拳
掲げる事は今は出来ない
突き出す先も見当たらない
だから自分の左胸に
ドンとぶつけて確かめる
ここにある心はまだ動いてる
もう一度……ドンと
全ての自分と云うモノが
止まってしまわないように
笑夜