縁起でもないけれど、このまま羽が生えて、楽園へと飛んでいってしまうような気がした。
夢さんは、ゆっくりと上体を倒して私の膝の上に頭を乗せて、睫毛を伏せた。
私は無意識のうちに手を伸ばして、夢さんの髪の毛をすいていた。
「消えてなくなりたいよ…。」
夢さんは声にならない声で、呟いた。
夢さんはデザイナーになるのが長年の夢だった。幸運にも才能にも恵まれた。しかし…。明王寺家に生まれたことで、夢さんに将来を選ぶ自由なんかなかった。当主を継ぐことを強制され、やりたくもない仕事をやらされ続けていた。っていうこと…?
どれだけのものを、一人で抱えてきたんだろう。自由も与えられず、独りで戦い続けて。