「こんな人生になるはずじゃなかった。」

 一流大学を卒業してから早五年。浪人もしたから、現在29歳。佐竹浩二は思い描いていた夢と乖離した現実にただただ悲観した生活を送っていた。コンビニアルバイトもレジ打ちという単純作業が嫌で3日で辞めた。彼女にも別れを告げられ、何も無くなった彼は「自殺幇助」の仕事に従事している。一流大学という肩書きが「どうしても正社員にならなければならない」という固定観念に縛り付けられるのである。

 2008年のリーマンショックが彼を陥れた。決まっていた内定を取り消されて焦るにも、世間が職を失っている時代に新卒の「椅子」など用意されていなかったのである。大手証券会社を6社受験して6社とも内定をもらい、給料だけで判断をした結果すぐに5社を蹴った。

「世の中なんて甘いものだ。日本ほど学歴がモノを言う国はない。年功序列が生き残る世界に『グローバル化を推進します』だ?馬鹿を言うなら寝てから言えっての。」

 この口癖がキャンパス内で聞こえたら佐竹がいると思えという伝説ができたほどだ。鼻を折られた今、「自殺幇助」の仕事をしているなんて当時は誰が予想できただろうか。