それでも好きだよ。

今日もバスケ部の朝練が始まる。

火曜日と金曜日は男女バレー部に体育館は使われてるから男子バスケ部校庭の一角に設置してあるバスケットゴールの前で練習する。



いつもこの席が私の特等席。
なぜなら校庭から練習風景が見れるから。

あ、あれ?
もう練習終わっちゃった。
あぁ、もうこんな時間なのか。あっという間だな・・・・

しばらくは校庭を眺めていた。


ガラッ!


勢いよくドアが開いた。
見ると男子生徒が息を切らしながら立っていた。

一気に顔が赤くなる。

大好きな人が立っていたから。

でも告白は出来ない。

私には理由があるから・・・・・
















これは2人の長年に亘る淡い恋物語・・・・・
オレ、秋野光真 高2。






バスケ部で勉強はちょっと苦手。




女子にはどちらかと言えばモテるかも。



高校に入って今までで2回告白されたし。





でも、自分から好きになった子としか付き合いたくなくて断った。

6月初旬 


朝練を終えたオレはいつもHRが始まる直前まで部室で騒いでる部員をおいて1人校舎の中に居た。


「絶対提出」と言われた課題を忘れてきてしまい授業が始まる前にやろうと思った。


オレ達のクラス、2-2があるのは3階。階段を一段飛ばしで駆け上がり息が上がりながら

も3階の廊下に来た。まだ誰も居ないからはかどるだろう、と淡い期待を膨らませながら

教室の前まで来た。

ゆっくりとドアを開けると1人の女子生徒が窓際のうしろから3番目の席に座って窓の外

を見ていた。オレの前の席。




茶色がかかったまっすぐな髪の毛 
二重の大きな目
透けるような白い肌





言葉を失いそうになった。



ハッと我にかえった。

ヤバッ!こんな子いたっけ?
クラス替えしてもう3ヵ月経つのに男子の名前と顔は覚えた。
けど女子はほとんど覚えてないや・・・・。


しかも前の席なのに名前覚えてないとか超失礼じゃん!


とりあえず挨拶だけしとくか。


「・・・・おはよ。」


少し小さな声で言うと、綺麗な瞳がオレの方を向いてきた。
その瞳で見つめられドキッとオレの心臓がなった。


「おはよう、秋野くん」


微笑んで女子生徒が言う。

ってかオレの名前を覚えてたことにビックリする。
マジでこの子誰だっけ?


「アンタ、よくオレの名前覚えてたね。オレまだ全員顔と名前が一致しないんだけど」


「そうなの?私、新学期になって2週間で全員覚えたよ?」


また微笑んだが作り笑顔のような感じがする。


「沙菜」


女子生徒がポツリと言った。


「え?」


オレは思わず聞き返す。


「雪崎 沙菜 だよ。」



もしかして、この子の名前覚えてないの気付かれた?!


「べっ別に覚えてるから!前の席の人の名前ぐらい!!」


あわてて否定する。いや、覚えてなかったのは本当だけどやっぱり失礼じゃん?


「いいよ、無理しなくて。私、存在感無い方だし」


雪崎が寂しそうに笑う。


「ご、ごめん・・・」


そこから会話が続かなかった。


「・・・・・」




「・・・・・」




この沈黙を破ったのはオレだった。


「あーーーーーーーーーーーーー!!!」


課題やるのすっかり忘れてた!
自分で考えてやってたらもう間に合わない。

ふと、雪崎を見るとキョトンとした顔でオレの顔を見つめていた。

そんな顔で見てくるのも無理ないよ・・・・


だってオレ突然叫んだわけだし・・・・・

もう、こうなったら雪崎に見せてもらうしかない!


「雪崎!」


「はっ、はい!」



突然、名前を呼ばれて雪崎はビックリとしたように目を見開いている。


「課題出てたじゃん?あれ見せてくれない?」


「いいよ」


以外にもあっさり受け入れられてビックリした。


そこから、オレは課題をやって雪崎にノートを返す。


「サンキュ、ホントに助かった。今度何か奢るよ」


課題を映し終わったオレはノートを渡しながら言った。


「えっ!いいよ、別に!」


雪崎は白い頬をピンクに染めて慌てて否定した。
なんかこうゆう仕草にもドキッとしてしまうのはなぜだろう?


「いや、遠慮しないで、マジで。何かお礼させてよ。」


オレが言うと、雪崎はうーん、と考える顔をした。

10秒くらい経って雪崎は思いついた様に明るい顔をした。

「私ね、写真部に入ってるの」


「うん」


「それでね、もうすぐ駅前にある市民会館のロビーに飾られるの。それでね・・・」


「うん。それで?」



「それ見に来て欲しいの!」


「は?」


びっくりした。今日ちゃんと話したばかりなのにそんな事言われたから・・・








オレが固まってると雪崎は少し暗い顔になった。


「ゴメン・・・迷惑だよね」


ヤバッ!傷つけちゃった!イヤじゃないのにオレが固まってたせいで。
答えは決まってる。



「イヤッ!行きたい!一緒に行こうよ」



今度は雪崎が固まった。
理由はわかる。オレが『一緒に行こう』なんて言ったから。
どうしよう・・・。オレの言葉にウソは無いけど急にそんな事言ったから絶対引いてる・・・



「今の忘れ・・・・」



「うん!行く」



声がかき消された。
え??今なんて言った?『行く』って言ったよな。聞き間違えじゃ無いよな?



「えっホントに?」



「うん」



雪崎が大きく頷く。



すると雪崎は机の脇に引っ掛けてあるカバンを開けてファスナーを開けた。
そして、白いスマホを取り出す。


「・・・番号教えて?まだ詳しい日程出てないの。だから日程出たらメールする」


「おっおう」


オレもスマホを取り出して自分の番号を送信した。

その後は他のクラスメイトが来て話せなかった。