何をしていた
と聞かれてしまうと
何をしていたわけでも無い。

2人でいるとは思えないような雰囲気。

お互い余計な干渉をするわけでもない。
お互い会話を愛想まみれの無駄な会話をするわけでもない。


この距離感が
僕には心地よくて
また、普段僕の周りには無いものだった。


そんなゆったりとした沈黙を破ったのは
橘だった。

「俺、そろそろ教室戻るけど。」

"暁はどうする?"と目で尋ねられる。
その証拠に橘は立ち上がり
僕の顔を覗き、動こうとしない。

「ん、僕も戻るよ。」


橘に笑顔を向け立ち上がる。

こんな時間の過ごし方は初めてだった。

両手でズボンについた埃を払う。

ここから出てしまえば、
次はいつこんな時間が訪れるだろうか。

2人並んで出口へと向かう。

―――僕は現実へと引き戻される。


…嫌だな…。